起業家福沢諭吉の生涯
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「起業家」というよりむしろ「エンジェル」では? |
本書のテーマは「起業家」福沢諭吉です。
著者によると、福沢自身の記録や戦後のイギリスを中心とした研究者によって、福沢は明治期における西洋文明紹介の第一人者、あるいは慶応義塾を中心にした教育者としてのみ把握されることが多かったとしています。そして本書は、横浜正金銀行や丸善の設立、三菱の台頭、三井の復興などに貢献した「起業家」福沢諭吉というこれまであまり知られていなかった福沢像を提示しています。
なるほど面白いです。本書全体に流れるメッセージは一貫しており、傍証にも説得力があります。
ただし、本書では「起業家」を明確に定義していません。辞書どおりに考えると、起業家とは「新しく事業を起こし、経営する者」であり、本書を読む限り福沢は起業家の定義には当たらないと感じました。むしろ「創業後間もない企業家に資金提供や経営指導などの支援をおこなう個人投資家」である「ベンチャーキャピタル」や「エンジェル」と考えるべきではないかと素朴に思いました。
ただし、だからといって福沢の功績が否定されるものではまったくなく、本書を一貫するメッセージは非常に面白く、なおオリジナリティがあると思います。
あらためて感じたことは、福沢諭吉は実践者だったということです。福沢の人生を貫く「学で富み富て学び」という生き方に強い感銘を受けます。明治の人々に「実学」を説いた福沢は、自ら実業に携わり成功をおさめるという彼の教えを実践してみせた点で比類のない存在だったとあらためて思いました。
最後に、今となっては、こうした感想を直接、玉置教授にお伝えできないのが残念です。ご冥福を心よりお祈りします。
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起業家だった福澤諭吉 |
明治における啓蒙思想家のチャンピオンとされてきた福澤諭吉。本書は、そんな福澤像を覆そうとする挑戦的な著作である。著者によれば、福澤の本質は起業家であり、そのような観点から福澤の著作や書簡を読み解いていくと、正金銀行や丸善の設立にも彼の関与が大であったことがわかるという。蓄財にうとい学者先生も、逆に知の世界に興味を持とうとはしない商人も、同様に福澤の批判対象であった。歴史研究でありながら、ベンチャーの時代にもマッチした著作になっている。福澤に関心を持つ方々だけではなく、現代における起業やアントゥルプルヌールシップに興味を持つ方々にもお薦め。

